大阪高等裁判所 昭和41年(ネ)554号 判決 1968年5月31日
主文
原判決主文第一項(境界確定の判決)を取り消す。
控訴人の境界確定の訴を却下する。
控訴人のその余の控訴を棄却する。
控訴人が当審で拡張請求した所有権確認の請求を棄却する。
訴訟費用は第一、二審とも控訴人の負担とする。
事実
控訴代理人は、「原判決を取り消す。控訴人所有の神戸市葺合区熊内町二丁目五四番宅地五七坪九合一勺(191.44平方メートル)と被控訴人所有の同所五三番の二宅地二四坪一合四勺(79.80平方メートル)との境界線は添付第一図面(以下第一図面と略称する)(イ)(ロ)を結ぶ直線であることを確認する。第一図面(1)および(2)の宅地が控訴人の所有であることを確認する。被控訴人は控訴人に対し、同所五三番の二地上(事実上は五三番の二および五四番の両宅地にまたがつて所在する)家屋番号四〇番の二、木造瓦葺二階建居宅一棟建坪二二坪(72.73平方メートル)、二階一六坪一合六勺(53.42平方メートル)のうち第一図面(1)斜線の部分および(2)の石段を各収去して、同図面のBの宅地二二坪〇四(72.86平方メートル)およびみぎ石段の敷地を明渡し、且つ本件訴状送達の日の翌日(昭和三九年九月二〇日)から明渡しまで一ケ月につき金一万四、〇八七円の割合の金員を支払え。訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする」との判決を求め、
被控訴代理人は、「本件控訴を棄却する。控訴人が当審において拡張した請求を棄却する。控訴費用は控訴人の負担とする」との判決を求めた。
当事者双方の事実上および法律上の主張ならびに証拠の提出、援用および認否は、つぎの追加をするほか、原判決の事実欄の記載と同一であるのでみぎ記載を引用する。
控訴代理人において
一、仮に被控訴人主張の控訴人所有地と被控訴人所有地の境界線、すなわち、添付第二図面(以下第二図面と略称する)(イ)(ロ)(ハ)を結ぶ線に下水溝があつたとしても、それは地面に露出したものではないから、訴外山本権左エ門が訴外中沢省三に対して五四番ならびに五三番の一および同二すなわち第一図面ABCDの宅地(以下本件土地と略称する)の西側に所在する一棟一戸の建物および本件土地の一部を、訴外寺見信次に対して同東側に所在する一棟二戸の建物および本件土地の他の一部を、それぞれ売却するまでは、第一図面記載のABCDの各宅地がいずれも訴外山本の単独所有に属したせいもあつて、みぎ各売買の当時、買主の訴外中沢および同寺見が一見しただけでみぎ下水溝がそこにあることを認識することは困難であつたところ、訴外山本はみぎ売買に際して訴外中沢および同寺見に対して、それぞれ同人らに売渡す各土地がみぎ下水溝を境界とするものである旨を明示したことはないと思われる。けだしこのような明示があればみぎ各売買契約条項にその旨明示されているはずであるのに、その明示がないからである。したがつて、訴外中沢および同寺見は五四番および五三番の各宅地一筆宛を実地について指示を受けないで登記簿の記載に基づいて買受けたのであつて、訴外中沢から同人の買受けた五四番の宅地を譲り受けた控訴人の所有地と訴外寺見から同人の買受けた五三番の宅地の一部にあたる五三番の二の宅地を譲り受けた被控訴人の所有地の境界線は、五四番の宅地と旧五三番の宅地の境界線すなわち第一図面の(イ)(ロ)を結ぶ線であつて第二図面の(イ)(ロ)(ハ)を結ぶ線ではない。
二、訴外中沢が訴外山本から買受けた宅地の面積は登記簿上五七坪九合一勺(191.44平方メートル)になつている。したがつて、みぎ売買の契約書中でも売買目的土地の面積はであつて、被控訴人が主張するように、訴外山本は司法書士に対してみぎ分筆合筆をしてその後訴外中沢および同寺見に所有権移転登記手続をするように委任したけれども司法書士の過誤によつて、みぎ分筆合筆をすることなく、それぞれ従来どおりの面積の五四番および五三番の各宅地について各所有権移転登記手続がなされたからではない。けだし司法書士が委任された事項を過誤又は失念のために怠るようなことはめつたにないことであるからである。
三、添付第二図面(ハ)(ニ)(ホ)(ヘ)を結ぶ線で囲まれる石段は、被控訴人主張の(イ)(ロ)(ハ)を結ぶ線より更に西に突出している。みぎ石段は訴外山本から訴外中沢が買受け更に訴外中沢から控訴人が買受けた土地の中に当然に含まれている。控訴人は好意的にみぎ石段を被控訴人および前所有者に事実上使用させていたに過ぎないのであつて、被控訴人および前所有者がみぎ石段を使用していたからと云つてその所有者であることを意味しない。
四、訴外山本が訴外中沢に五四番の宅地を売渡した後に訴外寺見に五三番の宅地を売渡したものであることは、それぞれの登記簿謄本によつて明らかである(ちなみに、訴外中沢の取得登記は昭和二二年七月一日で訴外寺見のそれは同月一五日である)したがつて訴外中沢が五四番の宅地一筆全部を買受けた後に訴外寺見が五三番の宅地のみを買受けたのであつて、みぎ先の売買によつて既に訴外中沢の所有に帰し、もはや訴外山本の所有には属しない五四番の宅地の一部である五七坪九合一勺と明記されているはずである。けだし、売買契約書に記載された売買目的土地の面積とみぎ売買を原因とする所有権移転登記の申請書中の目的土地の面積が一致しなければ法務局はみぎ登記申請を受理しないからである。したがつて、訴外中沢が訴外山本から買受けた宅地の面積は売買契約書に記載するとおり、すなわち五四番の宅地についての登記簿の記載のとおり、五七坪九合一勺(191.44平方メートル)であつて被控訴人主張の三四坪六合三勺(114.48平方メートル)ではなく、訴外寺見が訴外山本から買受けた宅地の面積もまた、五三番の宅地についての登記簿の記載のとおり、四八坪二合七勺(159.72平方メートル)であつて被控訴人主張の七一坪二合四勺(235.50平方メートル)ではない。
五、訴外山本が訴外中沢および同寺見に本件土地の各一部をそれぞれ売渡した際のみぎ各売買を原因とする各所有権移転登記手続では、五四番の宅地がそのまま訴外中沢に、五三番の宅地がそのまま訴外寺見に売渡された旨の所有権移転登記手続がなされていて、みぎ各売買を原因とする各所有権移転登記手続に先立つて、第一図面の五四番の宅地をAとBに分筆しBを同五三番の宅地に合筆し、Bを除いた五四番の宅地を訴外中沢に、Bを加えた五三番を訴外寺見に所有権移転登記手続をする措置はとられていない。それは実際になされた登記が真の法律関係に合致するものであつたために、訴外山本はみぎ分筆合筆等の手続をすることを必要としなかつたからBの部分を訴外寺見が訴外山本から買受けることはできない。仮に訴外寺見が訴外中沢に先立つてみぎBの部分を訴外山本から買受けたとしても、訴外中沢が先に所有権移転登記手続を受けたから、訴外中沢の所有権が訴外寺見のそれに優先する。
六、実際の宅地の取引では土地の使用収益と切離して土地所有権のみの売買をして土地所有権の土地の使用収益が分離していることはまれではない。本件の場合も、訴外中沢は前記地上に他人所有の建物があることを承知の上でみぎB地を含めた五四番の宅地全部を買受けたのであつて、このようなことは少しも不自然ではない。
と述べ、
被控訴代理人において、
一、本件各宅地の売買はすべて各宅地の登記簿上の表示面積等を詮索確認することなく、すべて実地について行われたのであるから、地番の境界と各当事者の所有に属する土地の境界とは一致しない。
二、訴外山本は本件土地の一部宛を訴外中沢および同寺見に売渡した後、みぎ各訴外人を取得者として各売渡した土地の所有権移転登記手続をするに当り、司法書士に対し五四番の宅地を前記AとBとに分筆し、Bを五三番の宅地に合筆し、Aのみとなつた五四番の宅地につき訴外中沢を、Bを合筆した五三番の宅地につき訴外寺見を、それぞれ取得者とする所有権移転登記手続を委任したが、何かの手違いでみぎ分筆合筆の手続なく、各買受人に宅地一筆宛の所有権移転登記手続がなされたのである。
三、訴外寺見が訴外山本から買受けた建物から公道につながる石段は建物敷地と同様に建物の用地であるから、訴外寺見がみぎ建物とその用地を訴外山本から買受けた際には、その売買の対象に当然石段も含まれていたと解すべきである。けだし、訴外寺見が出入口のない建物およびその敷地を買うはずがないからである。
訴外山本は本件土地およびその地上の建物が同人の所有に属していた昭和五年一二月一四日頃同人が後に訴外中沢に売つた建物を改造するに当り、所轄警察署に建築届書を提出したが、同警察署が訴外山本に交付した届出承認書の添付図のうちの建物配置図(乙第一号証の六)には、建築しようとする建物の図形の外側にその用地を図示しその範囲を赤線で囲んであるが、その中ではみぎ用地から被控訴人方へ昇る石段部分を明らかに除外しているのであつて、訴外山本が訴外中沢にみぎ建物およびその用地を売渡すに当つてはみぎ石段を除外して売つたものであることを示すものである。
四、控訴人は本件建物および宅地を昭和二二年七月二二日訴外中沢から買受けたのであるが、以来一六年間、隣家の所有者である訴外寺見又は被控訴人が五四番の宅地の一部Bを使用していることを知りながら同人らに対し本件土地に関するなんらの異議も述べないですごし、昭和三九年二月一日に至つて突然被控訴人を相手方に本訴請求と同様の調停を申出たのであるが、これら控訴人の請求の基礎となつた主張は登記簿上の面積の記載を唯一の根拠とするものであつて、本件各土地の売買およびその後の占有使用関係の実際に副わない主張である。
五、万一控訴人が前記売買により公簿面積通りの宅地所有権を取得したとしても、被控訴人は前記B地(前記石段を含む)を平穏公然善意無過失に占有し始めてから既に一〇年以上を経過したので、これを時効によつて取得した。
と述べた。
証拠《省略》
理由
一(争いがない事実)
弁論の全趣旨に徴すれば、(1)登記簿上、神戸市葦合区熊内町五四番宅地五七坪九合一勺(191.44平方メートル)が控訴人所有各義に、同所五三番の二宅地二四坪一合四勺(79.80平方メートル)が被控訴人所有名義に、それぞれなつていること、(2)みぎ五三番の二とその東隣の五三番の一とが分筆される以前の同所五三番は、登記簿上、四八坪二合六勺(159.72平方メートル)となつていたこと、(3)みぎ五四番の宅地と五三番の二の宅地の境界が第一図面(イ)(ロ)の線であること、(4)被控訴人が五四番の宅地のうち、第一図面Bの部分上に第一図面(1)(斜線を施した部分)の建物を所有してみぎBの部分を占有しており、また第二図面(ハ)(ニ)(ホ)(ヘ)(ハ)を結ぶ直線で囲まれた部分上に第一図面(2)の石段を所有しみぎ宅地部を占有していること、(5)前記五四番(第一図面AB)五三番の二(同C)五三番の一(同D)三筆の土地はもと訴外山本権左エ門の所有で、ABCDの地上に、西側(Aの部分)に一棟一戸、東側(B、C、Dの部分に)一棟二戸の建物があり、当時いずれもみぎ訴外山本の所有であつたこと、訴外山本が訴外中沢省三に対しみぎ西側の一棟一戸と五四番の少くともAの部分(但し(ハ)(ニ)(ホ)(ヘ)(ハ)を直線で結ぶ石段敷地を除く)とを売渡し(B部分がみぎ売買の対象であつたかどうか争いがある)、昭和二二年七月一日みぎ建物と五四番の宅地全部(A・B部分)について訴外中沢を取得者として所有権移転登記手続をなし、同月二五日訴外中沢がみぎ建物と少くともみぎA部分の宅地とを控訴人に売渡し、控訴人は使用人太田実名義でみぎ建物および五四番の宅地全部(A・B部分)につき所有権移転登記手続を受けたこと、訴外山本が訴外寺見信次に対し同年七月一五日本件土地上の東側一棟二戸の建物および少くとも五三番の宅地(五四番の宅地のうちBが目的物件中に含まれるかどうかにつき争いがある)を売渡し即日みぎ建物および五三番地の宅地(C・D部分)について訴外寺見を取得者として所有権移転登記手続をなし、訴外寺見がみぎ一棟二戸の建物のうち西側の一戸及びその敷地(その範囲について争いがある)を被控訴人に東側の一戸およびその敷地(範囲について争いがある)を訴外佐野文也にそれぞれ売渡し、昭和二四年三月二九日前記五三番の宅地を五三番の二と五三番の一とに分筆し、前記一棟二戸の建物のうち西側の一戸と五三番の二の宅地(C部分)について取得者を被控訴人として、同東側の一戸と五三番の一の宅地(Dの部分)について取得者を訴外佐野として、それぞれ所有権移転登記手続を終つたことは当事者間に争いがないものと認める。
二境界確定の訴について。
境界確定の訴は、相隣接する二筆以上の土地の事実上の客観的境界について争いがある場合に、一筆の土地と他の一筆の土地との境界の確定を求める訴であつて、たまたまみぎ訴訟の当事者双方の主張する各自の本件所有権の境界が、みぎ二筆以上の土地の境界とそれぞれ一致するとき又はみぎ二筆以上の土地の境界を基準として測定されるべきときに、境界の確定が所有権の範囲の確認に役立つに過ぎない。したがつて境界確定の訴では、訴訟当事者双方間に相隣接する二筆以上の土地の境界について争いがあり且つみぎ争いが実利を伴うものである限り(すなわち無益の争いは除外される)、当事者双方の主張する各自の所有土地の限界がみぎ二筆以上の土地の境界と一致するかどうかにかかわりなく、訴の利益があると云うことができる)すなわち、二筆の土地の境界が一方の当事者の所有地内に引かれるときでも、二筆の土地の境界自体について争いがあり、且つ当事者双方の所有土地の限界が二筆の土地の境界を基準として測定されるときは境界確定の利益がある)しかしながら、訴訟当事者双方間に相隣接する二筆以上の土地の境界そのものについて争いがないときは、当事者双方間に各自の所有権の限界について争いがあり且つみぎ権利の限界が前記土地の境界とどんなに密接にからみ合つていても、境界確定の訴の利益があると云うことはできない。
本件の場合、五四番の宅地と五三番地の二宅地との従前から定められている客観的な境界そのものが控訴人主張のとおりに第一図面(イ)(ロ)を結ぶ線であることは被控訴人も認めて争わないこと前述のとおりであつて、結局隣接する二筆の土地の境界そのものについては当事者双方間に争いがないことに帰するから(本件の争点が土地所有権の境界如何すなわち所有権の地域的範囲如何であることは双方の主張自体から明らかである。)、境界確れの訴の利益はなく、みぎ二筆の土地の境界の確定を求める控訴人の訴は不適法として却下を免れない。
原審は当裁判所のみぎ見解とは異なる独自の見解の下に(原判決は、「相隣する二筆以上の土地の境界は各筆の所有者の所有権の地域的範囲の移動にともなつて移動するものであつて、二人以上の相隣地所有者間に相隣する二筆以上の土地の特定の一筆と他の一筆との間の従前からの境界について争いがなくても、相隣の土地に対する所有権の地域的範囲について争いがあるときには、新に定められる所有権の地域的範囲の境界はそのままみぎ二筆の土地の境界となるものであるから、、結局、境界確定の訴は相隣接する二筆以上の土地の各所有者間の所有権の地域的範囲の境界を確認する訴訟である」との見解に従つたもののように思われる。同旨大判昭和九年八月一〇日民集一三巻一六一七頁、反対昭和四三年二月二二日最高判、判例時報五一四号四七頁)、控訴人の本訴境界確定の訴をその実体について審理し、五四番地と五三番地の二との二筆の土地の従前からの境界であることにつき当事者間に争いがない第一図面(イ)(ロ)を結ぶ線を無視して、原審が控訴人の所有地と被控訴人の所有地の境界であると認める第二図面(イ)(ロ)(ハ)(ニ)(ホ)を結ぶ線をもつて五四番と五三番の二との二筆の土地間の境界であると主文第一項で確定しているのであるから、みぎ原判決は境界確定の訴の法律的性質の誤解に基づく不相当なものと云わねばならない。そしてみぎ原判決は、境界についての控訴人の主張を全面的に斥け被控訴人の主張を全面的に認容するものであるから、実質的にはこの点に関する控訴人の請求の全面的棄却に当るところ、当審のする控訴人のみぎ境界確定の訴を却下する判決は、みぎのように実質的には請求の全面的棄却に相当する判決より控訴人に有利な判決に当るので、この点で控訴人に不利益な変更を加えるものでないと認め、原判決主文第一項を取り消したうえ控訴人の境界確定の訴を不適法として却下する。
三所有権確認の請求について。
当裁判所は、控訴人の所有に属する土地は五四番の宅地のうち第一図面Aに当る土地(第二図面(ハ)(ニ)(ホ)(ヘ)(ハ)を結ぶ線で囲まれた石段敷地を除く)に限られ、同番の宅地のうちBに当る土地(第二図面(ハ)(ニ)(ホ)(ヘ)(ハ)を結ぶ線で囲まれた土地を含む)、すなわち、同番の宅地のうち第二図面(イ)(ロ)(ハ)(ニ)(ホ)を結ぶ線以東の地域は控訴人の所有に属せず、みぎ部分は被控訴人の所有に属するものと判断するものであるが、その理由はつぎのとおりの追加をするほかは原判決五枚目表最終行から六枚目裏最終行までの記載と同一であるのでみぎ記載を引用する。
<中略>
以上の認定によると、控訴人の所有地と被控訴人の所有地の境界は第二図面(イ)(ロ)(ハ)(ニ)(ホ)を結ぶ線であつて、それ以西は控訴人の所有に属し、それ以東は被控訴人の所有に属するから、五四番の宅地のうちみぎ線の以東にある第一図面Bに当る土地(第二図(ハ)(ニ)(ホ)(ヘ)(ハ)を結ぶ線で囲まれた石段敷地を含む)は被控訴人の所有に属し控訴人の所有には属しない。したがつて、第一図面(1)および(2)の土地は第一図面B地の一部であるのでみぎ(1)および(2)の土地が控訴人の所有に属する旨の確認を求むる控訴人の請求は失当である。よつて控訴人が当審で請求を拡張して追加した所有権確認の請求は失当として棄却する。
四控訴人のその余の請求について。
控訴人の被控訴人に対するその余の請求(前記B地上の建物および石段の収去、B地の明渡し、ならびにB地の賃料相当の損害金支払の請求)は、すべてB地が控訴人の所有に属することを前提とするので、B地が控訴人の所有でない本件の場合には、その余の争点について判断するまでもなく、失当として棄却すべきものであるので、みぎ当審の判断と同一趣旨の原判決は正当であつて、この点に関する控訴人の控訴は理由がない。
五よつて民訴法三八六条、三八四条、九六条、八九条を適用し主文のとおり判決する。(宅間達彦 長瀬清澄 古崎慶長)